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写真を撮ること、地元を愛すること。 #カメクラの沼カレ2020

年が明けしばらくして、今までとは真逆の生活を強いられることとなった。今年という一年は昨年に比べるととてもシンプルで、一瞬のうちに過ぎ去ってしまった。

私はただ、地元に留まるしかなかった。


今までどおりがとても難しくなったのは3月下旬のことだ。もともと予定していたお花見も、街中のフォトウォークも、なにもかも中止せざるを得なかった。昨年までは色んな地域の友人たちと、西へ東へ写真を撮りに出かけていたが、それも今は難しい。

どこへ行こうか。どんな写真を撮ろうか。そもそも一人で、しかも地元で。何もないこの場所で何を撮ればいいんだろう…?いつも誰かと写真を撮っていたのに、私はこの状況下でどう写真を撮る楽しみを見つけたらいい…?

気持ちがとても窮屈で、ぐるぐるもやもや考えてしまう。気持ちは重くなる一方だ。せっかく春がやって来たというのに。

悩んだ挙句、私は催花雨が降る鳳来の山の寺へ行ってみることにした。

山ならば人も少ないだろうし、もしかしたら桜も咲いているかもしれない。“とりあえず”な気持ちでしかなかったが、私はこの場所で思いもよらない大きな収穫を得ることとなる。

「今年の全ては、ここから始まった」と言っても過言ではないだろう。

「なんて美しいんだろう…」

思わず心の中でそう呟いた。しとしと…と、雨が降る中現れたのは、荒々しい岩肌と深い緑。そしてそれを隠すかのように霧が立ち込める、なんとも厳かな姿。まるで歴史の教科書で見た雪舟の水墨画のよう。自然が作り出す景色に圧倒された瞬間だ。

私は地元を甘く見ていたようだ。この景色との出会いによって、私の中での「何もない地元」のイメージがガラリと変った。同時に自分の地元への愛のような、恋のような感情にも気づかされた。

それからというもの、街中でのスナップやポートレートを撮ることが好きだったが、風景写真にも興味が湧いてきた。身体の不調も重なり、ほとんどの時間身動きが取れずにいたが、回復した夏の終わりから秋にかけては海、街、山へ車を走らせた。


私が生まれ育ち、現在も暮らしている東三河。これからこの地が見せてくれた今年一年の風景を紹介していこう。

早朝・豊橋市の伊古部海岸。この海岸が見せてくれる空、海、砂のすべてが私は好きだ。ここ一帯の遠州灘沿い約47kmの浜を「表浜海岸」「片浜十三里」などと呼ぶらしい。耳を澄ますと、打ち寄せる波の中に釣竿が風を切る音が微かに混じる。

京都・鴨川沿い名物「鴨川等間隔」ならぬ、伊古部の釣り人たちによる「伊古部等間隔」を、雲間から現れた朝陽が優しく照らす。それまで肌寒かった空気をぬくぬくと暖める陽の光にはありがたみを感じる。

早朝から伊古部を訪れるのは釣り人だけではない。多くのサーファーが“いい波”を求めてやってくる。

伊古部海岸と同じく表浜海岸の端、恋路ヶ浜に立つ伊良湖岬灯台。愛知の南の果て。向こう岸には伊勢・鳥羽がぼんやりと見える。灯台にどこか哀愁を感じるのは私だけだろうか。岩場に座り、灯台と並んで海をぼうっと眺めるのも好きだ。

海からの潮風は時折激しいが、目には見えないはずの風は、その存在を私たちに示すかのように、きめ細かい砂の上へ美しい波模様を描く。

夕暮れ時の、今年一愛に溢れた一枚。この伊古部の浜の美しさを推していたところ、遊びに来てくれた友人たち。こんな遠くの地まで来てくれて感謝しかない。

栄えているかどうかと聞かれたら、まだまだ頑張れると思うけれど、古きも新しきもどちらもうまく共存している姿が見られる街だと思う。おかげで、街を歩くと趣ある風景に出会うこともある。

この街には、写真がきっかけとなって出会った人も多い。こうした縁はこの先も大事にしていきたい。

もちろん、街には人々の暮らしを見守る寺社仏閣もある。頻繁に出向くわけではないけれど、得も言われぬ力を感じられる気がして、時々ここへ訪れたりする。

鳳来寺山をはじめとする、奥三河の山々の自然は本当に美しい。

冒頭の春先の姿から時は流れ、初秋の鳳来寺山。この日の天気は晴れていたが、通り雨が降った。「山の天気は変わりやすい」というものだろう、一瞬のうちに霧が現れた。雲間からの徐々に陽光が差し込み、岩肌を照らす…。これまたなんと美しい景色だろうか。秋が深まった頃には、ところどころ紅葉している姿も見せてくれた。冬は雪が降ったりするのだろうか…。まだ見ぬ冬の姿に興味をそそられる。

静けさが際立つ山の中。ここ鳳来寺山は映画「もののけ姫」劇中の“無音”の一部が録音された場所でもあるようだ。ゆえに、時が止まっているかのような錯覚を覚える。最近知ったことなのだが、この東三河は日本を横断している世界第一級の断層・中央構造線の真上らしい。不思議なことにこの直線上には信仰の対象となるものが多い。人と自然との不思議な縁を感じる、ロマンある話だ。

桜の時期は、鳳来寺山の麓で枝垂れ桜や、河津桜の並木道にも出会うこともできる。

「からくれなゐに水くくるとは」

小学5年生の頃、野外活動で行ったきりになっていた奥三河のとある森。少し時期は遅かったようにも思えるが、秋はこの森一面を紅に染め上げていた。来年もまたこの景色を見に必ず訪れよう。


誰しも「ここではないどこか」に憧れてしまうものだろう。私もそうだった。住む分には慣れてしまえば都と化すが、「何かおすすめの場所はある?」と聞かれても黙り込んでしまうのが常だ。

暗い、重たい雰囲気漂う一年ではあったけれど、私にとっては良い機会であったように思う。こんな美しい風景が、生まれ育った地にあることを知れたのだから。写真を撮るモチベーションへとつなげることが出来たのだから。美しいものに囲まれて生活をしているということにもっと誇りを持ちたい。

まだまだ知らない場所もたくさんある。出向いて写真に撮りたくて仕方ない。私はこの地に恋をしているようで、今、とてもワクワクしている。

皆さんも自分の生まれ育った場所・今身を寄せる場所に「どこかいまひとつ…」なんて思うところがあれば、“とりあえず”でいいからカメラを持って出かけてみてほしい。あてのないドライブがてら、なんでもいい。

まずは自分の足で動き、自分の目で見ること。もしかしたら人生観だって変わるような、思いがけない出会いがあるかもしれないから…。


この記事は、ブログ「コトバコ」のしむさんによる毎年恒例のアドベントカレンダー企画への参加記事です。「カメクラが沼へ誘う」のキーワードのもと、カメラや写真が好きなブロガーさんたちが12月1日から25日まで毎日リレー形式で記事を更新していくもの。

私が参加している「アドベントカレンダー1st Roll」昨日12月10日の担当は、くじら氏でした。

『Film Photography 2020 −フィルムカメラで撮る12ヶ月−』

明日12月12日の担当は、おぐろさんです。お楽しみに◎

*12/20 追記:更新されましたので、下記リンクからどうぞ。

『【LOMO LC-A+】ありがとう、ロモの助。』

そのほか参加者の方々の更新記事は、Twitterでハッシュタグ「#カメクラの沼カレ2020 」を検索するとコメントなどを交えて確認できます。


本文中でも触れましたが、2020年は感染症の流行や自身の体調不良により、更新がだいぶ滞っておりました。そんな中でも当サイトに足を運んでいただき、読者様には大変お世話になりました。来年もどうぞ、よろしくお願いいたします。


毎年の如く、私はまた新たなカメラの沼にはまってしまったようだ。流石に今年はこれが最初で最後。皆様も良いカメラライフを…。

「my new gear…」

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